丸善の卓球場に行くと、梅澤さんが小学生の指導をしていた。「急ぎませんから」と言ったが、早々に切り上げてくれた。

突然、「全日本で優勝しました」と言う。「えっ、今年はお嬢さんの試合と重なるので、申し込まなかったはずなのに」と思っていると、丸善クラブが全日本クラブ選手権男子2部で優勝したという話だった。

今年は、サーティースで2年連続優勝した藤本さんや昔水谷選手がわざわざ練習のために出向いてきた橋本さんとか、強い人がいたので勝てたということだった。今は、梅澤さんが丸善のトップなので、喜びは大きかったようだ。

僕との試合前に梅澤さんは「今日は、本気でやっていいですか」と言う。先月僕が惨敗したので、手加減しようかと言う意味だ。「先月の試合で実力に大きな差がついてしまったのは分かっています。どのくらい差が付いたか知りたいので、本気でやってください」とお願いした。

ジャンケンは僕が勝って、サービスを選んだ。正直のところ、今回の試合はオール0で負ける可能性があると思っていた。梅沢さんより動体視力が大きく上がっていれば勝てる可能性はあるが、動体視力を大きく上げると生活に支障が出る可能性があるので、3カ月ほど前から動体視力が上がるのを抑えている。そのため、動体視力をあげるのに、肥田式と卓球と囲碁による脳トレが基本になっている。

囲碁による脳トレについても、梅澤さんに教えているので、トレーニングメニューはほぼ同じだが、僕と梅沢さんでは体質が違う。梅澤さんの体質は、息子や肥田春充のように柔らかいタイプに入る。同じように、肥田式をやったら、梅澤さんの方が動体視力が上がるのは早いはずだ。もし、僕と同じ体質の読者がいたら、板の間で裸足で肥田式をやり、踵を思い切り床に打ち付けないと体は変化しない。そこまでしても、梅澤さんのタイプのような変化は起きない。

最初のサーブでエースを取ったとき、「これで0で負ける可能性はなくなりましたね」と思わず言ってしまった。ところが、梅澤さんのサーブをバックハンドで打ち抜くこともできたので、気が付いたら6-2で勝っていた。「あれっ、差がついてない。息子のように陰の本でも大量にもっているのかな」と思ったが、結局、逆転され7本しか取れなかった。2セット目は4本、3セット目は2本だった。

僕は梅澤さん以外と卓球の試合をすることはないので、普通は3セット目あたりから調子が出てくる。だから、7セットマッチをお願いしたことがあるが、5セットマッチしかやってくれない。梅澤さんは1セットも取られたくないのだ。社長にも『試合は試合をする前から始まっている』と言われているので、ルールに違反しない範囲であれば、あらゆることをする。

ところが、東京都の試合で個人優勝し、丸善クラブが優勝したので、もう僕に負けることはないと確信したようだ。いつもは、試合専用の強力なサーブを練習して僕と対戦しているが、今回は、普通の練習試合と同じように対戦したのだ。だから、第1セットで7本取ったのは僕の実力ではない。ひいき目に見て、最後のセットの2本が実力だ。

以前、藤本さんがサーティースで2年連続優勝したことがあった。サーティースで優勝すると、卓球専門の雑誌に載るし、ポスターまで作ってもらえる。丸善スポーツの社長は「自慢の息子です」と言っていた。この人と一度試合をしてみたいと思ったので、丸善スポーツで顔を合わせたとき、「梅澤さんから1セット取ったら、試合をお願いできないでしょうか」と聞いてみた。そうしたら、「いいですよ」と言ってもらえた。

それから、3か月後に1セット取ることができた。そうしたら、梅澤さんの顔色が変わった。僕は驚いてしまった。「全日本に出るような選手は、素人の高齢者に1セットでも取られると、ものすごくショックなのだ」と思った。それで、2セット目は手を抜いてしまった。その後、2年以上1セットも取ることができなかった。

1セット取ったので、藤本さんは、毎月1回1年間練習付きの試合をしてくれた。毎回10セットも試合をしてくれた。本当にラッキーだった。これは想像だが、僕に1セット取られた梅澤さんは、思いっきりしぼられたに違いない。藤本さんが引退すれば、梅澤さんが丸善クラブを背負って立たなければならないからだ。

あるとき、丸善の卓球所に行くと、梅澤さんが試合をしていた。試合が終わってから、「今の人、うまいですね」と言ったら、「渡辺さんとやるときのサーブとはサーブが違いますから。3本以上は絶対に取らせません」と言ったので、やっと特別扱いされているのに気がついた。僕と試合をするときは、試合用のサーブの練習をし、僕との試合のシミュレーションまでするようなのだ。

今後、梅沢さんが気を緩めることはないだろうから、厳しい試合が続くに違いない。

2019/10/27
※『囲碁による脳トレについても、梅澤さんに教えているので、トレーニングメニューはほぼ同じだが』というのは、僕の勘違いだった。最近ようやく分かったのだが、僕の肥田式は腎の治療と詰碁による脳トレの上に成り立っている。だから、腎の治療と詰碁をしなければ動体視力は上がらない。ところが、梅澤さんは経絡的進化で胃経の三里の硬結がないため、肥田式を繰り返すだけで動体視力がいくらでも上がるのだ。しかし、動体視力が上がりすぎるとサーブが入らなくなるので、程々のところで止めていたのだ。詰碁など全くする必要がなかったのだ。
※最近、神経系が本格的に緩み始めた。そこで、ミミズを生成して作った地竜という漢方薬を飲んでみた。僕の研究では、イノシシがミミズを食べると神経系が緩むのだが、人間が飲んでも神経系は緩まない。僕の実験では、温清飲という漢方薬を飲んだ方が効果が高い。効果が高いと言っても皮膚がかすかに緩み、神経系もかすかに緩むだけで、動体視力には何の影響も与えない。しかし、三里を緩める独自の漢方薬を中国茶と菊の種と大根の葉から作り、毎日飲んでみたら、皮膚がわずかながら毎日緩むようになり、動体視力が急激に上がるようになった。その結果、昨夜、神経系が本格的に緩み始めた。試しに、卓球台の向こうに立ててある反射板にドライブ系のサーブをあててみると、返ってきたボールの着地点がわずかに伸びていた。その直後に肥田式をすると、着地点はさらに伸びた。
※皮膚が緩んで神経系が緩むと肥田式で動体視力が上がるのである。僕は30代のころ肥田式ができるようになり、緩めたいところを自在にゆるめられるようになったが、しばらくして、肥田式は極めて効果が高いような気はするのだが単なる錯覚にすぎないことに気がつき、肥田式はやめていた。
※ところが、この話を書き始める少し前に、息子に肥田式という健康術があるということを教えたことがあった。驚いたことに、そのときは動体視力が上がり、息子も肥田式で動体視力が上がったのだ。
※僕の動体視力が上がったのは、今考えれば、30年間にわたって皮膚を支配する肺経を緩めた結果だった。息子の場合は、梅澤さんと似たような進化をしている結果だった。
※肥田式で動体視力が上がらなくなったのは、30年間にわたって皮膚を緩めた蓄積を使い果たした結果だった。今回も、肥田式を2回すると皮膚を緩めた蓄積を使い果たしたため、肥田式では動体視力が上がらなくなった。
※息子も最初の1回は、動体視力が上がった。しかし、次第に肥田式を独自のものに改変してしまった。その結果、本人には大きな効果があると感じられるにもかかわらず動体視力が上がらないものになってしまった。脳が肥田式をしないように進化していると推定している。
※この事実は、かつて人類が肥田式で繁栄し、絶滅を繰り返した後、肥田式のできない人間が種として生き残ったことを意味している。
※梅澤さんが肥田式で動体視力が上がるのは、膝に致命的な問題があるため細々と生き残る、一般的な進化の過程からわずかに離れた種族だったからである。
※ところが、梅澤さんの種族は体力のある種族に北方に追いやられるにしたがって生物学的な進化をし、膝が強化されて、肥田式で腎の機能が上がるようになっていたと推定される。